グッドデザイン賞

2025 クレヴィア用賀

クレヴィア用賀

受賞対象名:クレヴィア用賀
部門 / 分類:中~大規模集合住宅

東京都世田谷区の分譲マンション。開発地は、都道環状八号線(幹線道路)沿いの低層戸建てが広がるエリアで、“日常における空の広がりとの調和”が色濃い環境。本件が、周辺戸建て街の人々にとって遮音壁の役割を果たす期待がある一方で、日常の空を望む上での大きな壁になるという課題を克服するデザインが必要だった。そこで、本建物を“背景の広い空に向かって伸びる大樹”として捉え、空とセットで成立するデザインを実現。周辺住民の用賀愛を継承するランドマークを創りあげた。

【受賞となったデザイン・環境等に対する物件特徴】

自然の光景の中において空は最も広く高い位置にあること、その空へ視線を誘うように伸びるのが樹木であるという関係性から着想し、建物自体を"空に伸びる大樹"として捉え、"空とセットで成立するデザイン"を目標とした。
背景の空を広く見せるため、当初計画を変更し、建物をあえて中低層化した。また、空に伸びる大樹を表現する手法として、大樹のダイナミックな幹を表現するためにバルコニー庇の目地を深く広く設け、迫力のある木板調の風合いを実現。繊細な枝を表現するため戸境壁を薄い杉板型枠コンクリートで仕上げて幹の引立て役とし、"建物=大樹"として仕上げた。
日中の青空をバックにした清々しい顔、日が沈む前の柔らかな顔、"一緒に表情を変えていく空と大樹"というランドマークが用賀に住まう人々の根源的な願いを継承している。

<審査委員評価コメント>

都市と自然の共存を意識した設計が印象的な集合住宅である。幹線道路沿いという立地条件に配慮し、遮音性を確保しながらも、周辺住民が大切にする「空とのつながり」を損なわないよう工夫されている。建物全体を「空に向かって伸びる樹木」と見立て、中低層の構成によって背景の空を広く見せる設計が採用されている。バルコニー庇の深い目地で力強い幹を、杉板型枠仕上げの戸境壁で繊細な枝を表現するなど、シンプルにデザインをまとめつつ街に対する気遣いが感じられるデザインである。このプロジェクトは、地域の環境や住民の価値観に寄り添いながら、街並みに調和するランドマークとしての役割を果たしている。空とともに表情を変えるその姿は、日常に自然な形で溶け込み、周辺に穏やかな存在感をもたらしている。過度な主張を避けつつも、地域に新たな魅力を加える建築として、静かに評価されるべき取り組みと言える。